殴者

valkil2005-09-25


MOVIXさいたま
一人で


明治時代初期。雷一家のボス、ピストル愛次郎(陣内孝則)は、薬の闇取引と、強い男たちを闘わせる「殴り合い」のゲームを仕切っていた。
腹心の暗雷(玉木宏)は、幼い頃に愛次郎に父を殺されながら、愛次郎の影法師として働いている。
ある日暗雷は、対立している蟷螂一家(親分は篠井英介さま)が、画期的なイギリスの新薬を扱っていることを知り、薬を持ち込んだイギリスの商人、ヴィンセントに近づいた。

雷一家の横槍に怒った蟷螂一家に、暗雷は、販売権をかけた「殴り合い」の試合を持ちかける。


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今年100本目を飾ってくれたこの作品。
観る前は「チョイス間違ってたらどうしよう」と不安だったんですけどもね。
予告で篠井さんの姿を観て、【これだ!!】と決めてはいたんですけども。


…この映画にしてよかった。


あたしこういう映画大好き。

たった一日の話。
それに至るまでの過程が回想で描かれ、ラスト30分はそこからの出来事。
たった一日に凝縮され…ってのか、なんてのか、うまく説明できないんだけどほんとに面白い。


暗雷、それを慕う月音(水川あさみ)、二人にとっての仇である愛次郎、この三人の中心人物が織り成す心模様が一つの見所で、それから目を離せない。


彼らの心情は、わずかづつずれていて、それは内容においても、時間的にも。
特に暗雷と月音の二人は互いに慕い合っていながら、その心情がなかなか交わらない。
ついにそのときが来ても、「線」での一致を望む暗雷と、「点」での一致を望む暗雷とでは食い違ってしまう。

あくまで他人同士である人間の微妙な心情の食い違いを見事に表現していて、まさに見事としか言いようがないです。


玉木くんって今までいいと思ったことなかったんだけど、この映画の彼はかっこよかったよな。
そして水川あさみは凄かった(ここから、あたしの日記からまんまコピペしてます)。


よく[死ぬんならこの瞬間がいい]とか[今なら背中刺されても笑って死ねる]と思うことがあるし、口に出しても言う。

友達にもこの類の言葉を使う人は多い。

でも、幸福の絶頂にあるその瞬間、自ら命を絶って、[永遠にこの瞬間を閉じ込める]なんて潔さを発揮できるクソ度胸を持った人間が実際にいるんだろうか


[殴者]ではそれをやってのけた人物がいる


長い長い、ほんとに長い間待っていた相手が、やっと自分が夢見ていた行動に出てくれた

通常なら[苦労するかもしれないけど二人でやっていこう。幸せになろう]ってとこだ。

でもその人は相手を殺し自分も死ぬことで絶頂を永遠に閉じ込めることを選んだ。

わかんなくはない。

でも自分が出来るかったらできません。

澤田謙也小隊長と一晩過ごして翌朝死ぬって[希望]は未だ健在(昨年あたりからエディソン・チャンもエントリーされましたが)。

でも翌朝なんである、あたしの場合。
幸福の絶頂の余韻で…なんだから潔くない。


願望として[命と引き換えにしても叶えたい]という強さが足りないだけかもしれない。

なんだかわけわかんなくなってきましたが、最近心にひっかかってしょうがないの、この場面が。
だからもっかい観てこようと思います

今年一番好き、でもなく今年一番感動したでもない

でも今年一番心にひっかかったのはこの[殴者]かな


【追記】

すっかり書くの忘れてた。これ書かないでどうするよって。

桜庭和志高山善廣ヴァンダレイ・シウバドン・フライなんていう本物の格闘家たちが土俵の上で熱い殴り合いの勝負を見せてくれてます。最高です
桜庭はやっぱお面つけてくれるんだもの。椅子から落ちそうになるくらい笑ったわ、あたし。

その格闘軍団に混ざっていささかも引けをとらない虎牙光輝はやっぱり凄いなり。