笑の大学
- 出版社/メーカー: 東宝
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MOVIXさいたま
一人で
昭和15年。日本に戦争の影が近づき、大衆娯楽の演劇にも検閲のメスが入っていた。
劇作家の椿一(稲垣吾郎)は、新しい台本の検閲のため、警視庁の取調室に出向く。
そこに待っていたのは、これまで心から笑ったことのない検閲官、向坂(役所広司)だった。椿の新作を上演禁止にするため、向坂はありとあらゆる注文をつけるが、椿は苦しみながらも、向坂の要求を逆手に取ってさらに笑える台本を作り上げていく。
こうして、2人の台本直しは、いつの間にか傑作の喜劇を生み出していくのだが…。
☆★☆★☆★☆★
舞台版があったことも知らず、あたしは予告を観て、お笑いのみの映画だと思っていました。
…やられましたね。
ほんとに「なんで世間の人は邦画を評価しない人が多いんだろう」なんて、わけかわんないことで憤ってしまったりして。
映画なのに、舞台を見てるような不思議な感覚の映画(もとが舞台だって知らなかったからね)。
とにかく、笑いのツボが所狭しと散りばめられてるから、しつこいくらいに笑いがやってきて、どんどん笑いがでかくなってそれが一気に涙へ。
顔がぐっしゃぐしゃになって頭が痛くなるくらい泣きましたわね、あたしは。
一人で観にいってよかった、と心から自分を褒めましたわ。
本当に良く出来てる話だよな。さすが三谷さんって感じですな。
登場人物がこれだけ少ないのに、最後まで飽きさせない台詞の上手さ。
役所さんの演技がうまいことは言うまでもないけど、吾郎ちゃんがそれにちゃんと食われてないんですわ。
迫力は役所さんだけど、それを飄々淡々とした「シマリスくん」のような風情で受けるって感じかなあ。
登場人物は少ないけど、その分濃ゆい。
あたしが好きなのは検閲官の部屋の外にいっつもいる爺さん。これがまあ可愛いんだなあ、めっちゃくちゃ大好き。
役所さんの圧迫感、吾郎ちゃんの「とほほ」で笑いがどんどんでかくなり、ハッピーエンドかと思わせておいて
「うそ、おい、そうくるか!!」となり、いよいよこれでハッピーエンドかと思いきや…「こうなるんすか〜!!」
最後、赤紙を手に吾郎ちゃんが出て行くシーンは本当に胸が詰まる思いで涙がとまりませんでしたわ。
昔、日本はこんなにも不自由な時代があったのか…と思うと、切なくて哀しくて。
まさかこの年まで生きてきて「お肉のために!!」という駄洒落で泣く日がくるとは思いませんでした。
涙で霞みつつあるスクリーンの中去っていく吾郎ちゃんの後姿、あたしには何故か天使の羽が見えた気がした。
終戦後、彼が帰ってきたらストーリーとしてハッピーエンドでいいのかもしれないけど、きっと彼は帰ってこなかったんだろう、そう思わせてしまうものがあのラストにはあった。
あとでパンフを読んだら、実際にモデルとなった人がいて、その人は召集されて戻ってはこなかったということだ。
そこでまたおさまった涙腺がぶわー!!って壊れてしまって、電車の中だったからさあ大変。
笑って、笑って、笑って、笑って、そして泣く。
阿漕な脚本だとは思いますが、これでいいんですよ、うん。
陰陽師が派手にCG使って悪霊とバトルしなくたっていい、
「はっぴーばーすでい、でびるまん」なんていわなくたっていい、
修学旅行の帰りに日本が破滅してしまって、生き延びようと頑張ったりしなくてもいい、
そんな大仰なことしなくても、胸を打ち、涙腺を大爆発させる作品は作れるのです。
ほんっとにいい映画観たなあ、いい涙を流してしまったなあ。
おすすめです。ってか、日本人なら必見でしょう、これは。