モーターサイクル・ダイアリーズ

MOVIXさいたま
一人で

1952年、喘息持ちだが“フーセル(激しい心)”の異名を取る23歳の医学生エルネスト(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、7歳年上の陽気な友人アルベルトとバイク旅行に出発する。
本でしか知らない南米大陸を、自分の目で見たいという好奇心からの冒険旅行だった。
故郷のブエノスアイレスを出発しパタゴニアへ。さらに6千メートルのアンデス山脈を超え、チリの海岸線沿いに南米大陸の北端を目指す1万キロ超の旅路だ。
だが所持金は乏しい上、バイクは故障ばかり。2人の旅は困難を極めていく…。


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【映画って、おもしろいなぁ】
それが観終わった直後の感想。

スクリーンで追体験するゲバラの旅。
南米大陸の自然の奥深さに、思わず感嘆の声を洩らしてしまった。

あたしが知っているゲバラのことといえば、カストロの盟友だったってことと、ボリビアでCIAに殺されたってことだけだった。
あとは「エビータ」でバンデラスが演じてたことでしか知識がなかったんですわ。
「ハンサム」だよなあってのは、ゲバラ好きの友人が大事に持ってた写真で知ってたけども。
だけど、この映画を観ていたら、なんだかゲバラが好きになってしまったですね。

旅の途中で出会う様々な人や出来事から社会の矛盾を学び、最終的には、
南米大陸は一つの混血民族から成り立っているのだから、偏狭な地方意識を捨てようぜ。」という思想に到達してゆくゲバラ
この映画で語られる、彼がそういう思想にいたるまでのエピソードがとても興味深かった。
確かにその経過は迅速唐突すぎる感は否めないけれども(レッドフォードの良心なんですかね)、でも「アリ」にした。だって心に染み入ったもの。


あたしが「感動」に近いものを感じたのは放浪するCommunist夫婦との出逢いと、ハンセン病患者との触れ合い。
馬鹿映画大好き、ホラーも大好き、でもこういう作品も大好きだったりするんだなあって、自分再発見しちゃったりして。

これだけ密度の高い生き方 をする人は早世するのもむべなるかな、と思ってしまう静かに熱い作品。
実際は謀殺という不慮の死だったわけですが。

主人公をやたらにヒロイックに描かずに、仕様もない理想主義だの青臭さだのもちゃんと描写し、
それでなお周囲をいつのまにか納得させてしまう人間的な魅力を発散させた主演のガエル・ガルシア・ベルナルに拍手。
「リバー・ランズ〜」のブラッド・ピットといい、ロバート・レッドフォードは、この手の“青春の輝き”で【新人】を売り出すのが上手いですね。
まあ、今回はプロデュースですけども。
あ、【新人】についてはあとでちょっと言いたいことあるんで書きます。

最後に、彼が一緒に旅をしたA・グラナードが彼に永遠の忠誠を誓い、キューバに居を移して医大を設立した、というエピソードが示される。

人生の全てを懸けて忠誠を誓える友がいるということ。
人生の全てを懸けて忠誠を誓ってくれる友がいるということ。
ゲバラという人間が、どれほど魅力的な人間だったのかということを、如実に語るエピソードだと思いました。
39歳でCIAに殺されたゲバラ。死ぬには早すぎる年齢だよ。口惜しいよな。


いい映画でした。予告編も良くできてた。
ただ、どうしても言いたいことがあって。

【レッドフォードが発掘したラテンのブラピ】ってテロップが入ったんだな。

…ラテンのブラピってあんた…

しかも【発掘】って…ガエルは発掘されなくても充分知名度あるわいな。
確かに「アモーレス・ペロス」「天国の口、終りの楽園」「アマロ神父の罪」とか地味な単館系ばっかだけどもさあ。

この宣伝方法はなんか間違ってる気がする。「ラテンのブラピ」で誰か食いつくのか?
少なくともあたしはくいつかないっすよ。
ってか、ブラピ風情と一緒にされたら困るんだけどなあ

…ごめんなさい。アンチ・ブラピのあたしの暴言でございました。

ただ、ハリウッド大作とか大好きで刺激と興奮を求めてしまう人には物足りないかもしれませんけども
あたしにはこの映画、凄くよかったです。ほんとに。あたし大好きだ、これ。


最後に出てきたのは老いたグラナード本人の姿。ちょっと涙してしまいました。