シークレット・ウィンドウ

MOVIXさいたま
一人で

作家のモート(ジョニー・デップ)は、妻エイミーとの離婚協定に疲れ果て、執筆に専念できず怠惰な日々を送っていた。
ある日、モートの暮らす森の別荘に、シューター(ジョン・タトゥーロ)と名乗る男が現れ、「俺の物語を盗んだ」と言い出した。
その内容は、モートの小説「秘密の窓」に瓜二つだった。
モートは、この小説がシューターの執筆より3年も前に発表されたことを告げるが、シューターは、「結末を直し、俺の名前で出版しろ」と言い捨てる。
その夜から、シューターの執拗な警告が始まった…。



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キングの作品の映像化は一部を除きことごとく失敗しています。
予告の時点で結構不安だったんですわね。
どうしようかなあ、観ようかなあ。

いや、でもジョン・タトゥーロだしな、原作の「秘密の窓、秘密の庭」って結構好きな中編だからな。
よし、観るかあ。


…ん??
……んん??
悪くないですよ、なかなか良くできてるぢゃありませんか。

そりゃ、原作好きな人にとっては「おいおいおい」って部分はわんさかありますわ。
思い入れが強いだけ、その分【なんだこりゃー】となる度合いは強い。

ただ、好きな中編とはいえ、さほどの思い入れがなかったのが良かったのか、「べつもの」として楽しめてしまったんですねえ。
これが大好きな中長編【霧】だったりしたら、多分野獣の彷徨とともにスクリーン破きかねない勢いで激怒して「クソ映画」よばわりしてたでしょうね。
(ってか、「霧」が映像化されるって時点であたしゃ絶対評価しないと思うけども)

あのとんでもないクソ映画「ドリームキャッチャー」のあとだから、あたしはそう簡単にはひるんだりしないのであります。


まずジョニー・デップ
原作のモートとイメージは違うものの、「ベストセラー作家」を怪演してくれてます。
ボサボサ頭にメガネ姿など、正直カッコいいわけではないのですが、作家だからな、と妙に納得させられちゃって。
アイディアが浮かばなくて、イライラしている様子や離婚協議中の不甲斐無さなどはうまく表現できていましたねえ。お見事でした。

あごを鳴らす癖あたりから、モート(デップ)がだんだん変調をきたしていることを匂わせ、
最後の場面でやっぱり、あんた、おかしいよと思わせる印象を前面の出している演技はさすが当代一の芸達者と唸らされました。
嗚呼、「シャイニング」のジャック・トランスはニコルソンでなく、あなたに演じていただきたかった!!!

そしてジョン・タトゥーロ
いいよな、この人〜。
ちょいと野卑でねちっこい喋りがぞくぞくーっとくるくらい素晴らしい。
確かにイメージしていたジョン・シューターではない。でも、それでも彼の醸し出す存在感はシューターそのものでした。

チャールズ・S・ダットン。
声がいいんだよな、この人は〜。
この声で耳元で囁かれたら腰くだけるだろうな、間違いなく。

トーマス・ハウエルには驚いた。
あの「タップス」の繊細な少年がこんなんなっちゃいますかあ。


興行的に成功したわけではないだろうし、世間の評価もキングファンの評価も芳しくはありませんでした。
それでもあたしはこの映画、嫌いではないです。

絶賛するほどではないけど、それでも「金返せ」ってほどではありませんでした、うん、悪くなかったな