ビッグ・フィッシュ

大宮ハタシネマ
一人で

エドワード(ユアン・マクレガー/アルバート・フィニー)は自分の人生を、常にロマンティックなおとぎ話のように語る。
魔女や巨人、そして村の伝説だった“大きな魚”との出会い─。
誰もが彼の話を楽しみ、彼を愛していた。
ただ一人、ジャーナリストになった息子ウィル(ビリー・クラダップ)を除いて…。
子供の頃は父の話に夢中だったウィルも、今は父の本当の姿を求めていた。
だがその思いをぶつけても、エドワードは一向に事実を話そうとしない。
しかたなくウィルは、ホラ話に隠された父の人生を探り始める。


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予告観た瞬間に「観たい!!」と思いました。
ティム・バートンっていうのは、その名前だけで「絶対観るぞ」と思わせる監督の一人。


「愛を求める異形」を描かせたら天下に並びない「オトナコドモ」、それがバートン。
あたしが一番好きなのは「バットマン・リターンズ」。ラストのペンギンの姿は何回観ても泣きますもの。


ときどき「あれ?」ってはずしちゃうけど、それでも観てしまうのがバートン作品。大好き。


そして、この作品…


すごい。
どこから切ってもバートン印の【金太郎飴】映画だあ!!!!!!
バートン節炸裂、惜しむことなく余すところなく、「優しさ」やいろんなものが詰まりまくっている。


ぞくぞくわくわく、好きな役者が出てるってわけでもないのに興奮して期待して…
映画でこんな気持になったのってほんとに久しぶりな気がする
なんてのかな、うまく説明できないんだけど、不思議な気持になった。


すっごく上質な絵本を見ているような気分になった。
ティム・バートンの映像って、やっぱ綺麗だなあ。
水仙の花を敷き詰めた中での求婚、青空に飛行機で描いたメッセージ、
暗く危険な道を抜けた時にポッカリと見えてくる桃源郷の世界、
ビッグフィッシュが水面で飛び跳ねる
…どれもこれも本当に美しくて印象的。


人が亡くなると、よく土に還ると言いますやね(あたしの名前はそこから命名されている)
でもさ、エドワードのようにビッグ・フィッシュになって水に還っていくのも素敵だなあと思った。


息子が父の話の中にある「真実以上の真実」に気付き、父がすることのなかった「最後の話」をする
もうこの一連のエピソードに泣けて泣けて。


ユアン・マクレガーって好きぢゃないんだけど、この映画の彼は良かったなあ。
ユアンもいいけど、アルバート・フィニーが抜群に良い。
オリエント急行」のポアロ以来何年ぶりの再会なんだろうなあ(エリン・ブロコビッチとか観てないしね)
歴代のポアロの中で、あたしは彼が一番好きだった。
ピーター・ユスティノフポアロも良かったけど、アルバートさんのポアロが一番だと思ってる。
クリスティの本を読むとき、イメージするのはフィニーのポアロだった。


エドワードを演じるフィニーは、涙が出るほど良い。
エドワードのユアンも抜群にいいんだけど、老エドワードは更に良い。


ウィルにとって父親エドワードは、超えるに超えられない存在だったんだろうなあ。
周りの人々を楽しませ、信頼されるエドワードと比較されて育っただろうウィルにとっては、この分野では超えられない父親。
そのために、ビジネスマンの道を選び、「信じられない話」と自分に言い聞かせて、父親との関係を断絶せざるを得なかった、と。
そんな彼が、「最後の話」をし、その話を聞くエドワードの間には、初めて、共通の意識、気持の交流があったのかも。
優れた父親とその息子の関係は、父親の存在が大きければ大きいほど、難しい問題を含んでいるんだろうなあ。 


なんて、ちょっと真面目なこと書いてみました



とにかく、お薦め。
スティーブ・ブシェーミダニー・トレホジェシカ・ラングという脇を固める人たちの存在や
あの「テーマパークとしても余裕で通用しそうな」前半、それだけでも規定料金の価値は充分ありっす。