大脱走

大脱走 [DVD]

大脱走 [DVD]


新宿ミラノ
ししょーと


最初にこの映画を観たのは、もういつのことだったろう。
小学生だったことは間違いない。
多分テレビの洋画劇場だったはず。
毎年大晦日になると『特別企画』ってことで放映されてたから、それだったかもしれない。


興奮した、感動した、泣いた。もう、全てが詰まった映画ってのはこのことなんだろうって
ガキながらに漠然と思った。


テレビで放映されるたびに、必ず観た。
放映される日は、朝からわくわくしていた。


この作品はあたしの人生で、毎年1回は必ず観る映画(の1本)として、本当にガキのころから定着している。


10年ちょい前にWOWOWで放映されたのを録画して、テープが切れてしまうくらい観た。
DVDが観れる環境になったとき、最初に買ったうちの1本は、この映画だった
(もう1本は【海の上のピアニスト】)


人生におけるベスト映画を選ぶとしたら、大脱走は最終選考まで残るだろう。
ガキの頃から、30年近くにわたって、この映画はあたしの映画人生で大事なものだから。


あたしの生涯の夢の一つは、この映画をでかいスクリーンで鑑賞することだった。


それが、今回叶った。
新宿ミラノ座の、馬鹿でっかいスクリーンで。


…子供の頃も、そして大人になってからも、何回観ても感動するし、
何回観ても、それまで以上に好きになっていたこの作品。


エルマーバーンスタインの楽曲が流れた瞬間に拍手が起こった(しなかったけどね)
「ぐれーとえすけーぷ」のタイトルが出た瞬間に拍手が起こった(しなかったけども)
スティーブ・マックイーン」「チャールズ・ブロンソン」の名前が出るたびに拍手が起こった(しなかったけどさ)
ドナルド・プレザンスやジェームス・ガーナーの名前が出た時に拍手が出ないたあ、どーゆーこったい!!なんて思いながらも、
劇場内は一体感に包まれた。


(どんなとこにも異分子はいるもんで、この環境で、この作品で、がさがさごそごそ音立ててる「きち●い」が数名、
ガキ連れて来て、そのガキが騒いでるのに放置していた「き●がい」が1名いたけど…この国は、もう駄目だ)


【再認識】
あたしの人生で最高の映画は、やっぱりこの「大脱走」だ。
ジーザス・クライスト・スーパースター」と同率首位かもしれないけど、本当にこの映画は最高だ。
音楽、キャスト、ストーリー、全てにおいて完璧に素晴らしい。


1963年ですよ、これ。
あたしが産まれる前に作られてるんですわ。


今の監督にはこれ以上の、いや、ちょっと及ばないってクラスの映画でさえ作れないだろうと思うな


(えー、以下、思いつくままに書いちゃ中断し…っていう「キルビル」んときと同じ状況でやりましたんで、支離滅裂かもしれません)


『脱走は、相手の警備を撹乱し、もって相手に戦力の消耗という打撃を与えるための軍人としての義務である。
その義務をあなたは否定するのか?』


将校でもある看守に対し、英空軍大佐が食い下がった時、独軍の将校は、それを否定しなかった。
ゲシュタポにあまり好感を持っていないこの将校、最後は、悲しい末路を辿るんだけど、
戦争が単なる殺し合いでは無かったかもしれない時代の、ある種…なんてのかなあ、かっこよく言えば「崇高な精神性を体現」していて、
この映画に一種の気品を与えているってやつですね。


この映画を超える「脱走もの」は存在しないだろう、とあたしは思うし信じてる。
(「アルカトラズからの脱出」は結構悪くなかった、と叔父(故人。幼い日のあたしの映画の師匠だった)は前に言ってたけど、観てないんだよな)


「この映画を還らぬ50名に捧げる」っていうラストの字幕。
50人かぁ・・・戦争犠牲者の全体から見れば微々たる数だろうが、なんかゾッとして、感に堪えるものがあった。


ブライスの「ありがとう、出してくれて」という謙虚な最後の言葉にはまたしても号泣。ほんとによく飽きないなってくらい、毎回泣くんですわ、あたし
後方霍乱かく乱のために脱走に生きたバートレット、みごとな生き様。
登場人物が多くて把握しにくいけど、キャラがみんな生きてました。今の役者には絶対できないよ、こんな演技。
みんな演技してるんだけど、「俺が俺が」って出ないの。ちゃんと自分の役をきちんとこなしてるの。
「なにをやってもトム・クルーズ」とかぢゃないの。「マックイーンぢゃなくて、(ちゃんと)ヒルツ」なの。



最終的には、ほぼ全員が脱走に失敗して、中には殺される者もいて、決してハッピーエンドではないんだけれども、
最後マックィーンの”独りキャッチボール”の「音」で、その無力感というか脱力感というか、何か心の中のモヤモヤが全て吹き飛んだ感じがするんだわ。
このシーンがあるからこそ、この作品を心の底から好きになれたと思うし・・・


あの「音」を聞いた時、こう思ったのはあたしだけぢゃないに違いない。


『コイツ、まだあきらめてねぇよ!!』



(長くなりますが、キャストについて書きたいと思います
何年も前から耳に入ってくる「リメイク」の噂があるんですが、これ、ハリウッドの有名どこが総出演らしいんで
リメイク自体には絶対断固反対なんですが、「やるとしたら誰かな」って考えるのは好きなんで、
終ってからそれでちょっと盛りあがったりしましたんで、それも含めて書いてきますね)


まずはやっぱりスティーブ・マックイーン@ Capt. Virgil 'The Cooler King' Hilts(「独房王」ってやつですか?)
中学生の頃、この人が亡くなったと朝のニュースで聞いたときは、本当にショックだった。
大好きでしたから、本気で。
ファンレター書こうと思って、実際に書いたことがあるのは、この人だけですわ。
(それがね、馬鹿だからローマ字で全部書いてるの。「hajimemasite watashiha…」ってさ。出さなかったけどね)


やんちゃで、セクシーで、可愛くて、とてつもなくかっこいい。
この捕虜たちの中ではちょっと「異質」なんだけど、でもそれがまたいいんだわ。
前述の一人キャッチボールの場面と、「いも焼酎の独立記念日」の場面は、何回観ても「だはー」ってなるくらい好きです。


1980/11/7に亡くなってるんですね、うちの親分の誕生日は、この方の命日だったんだなあ。


リメイクだとねえ…トムクルくんがやりたがりそうだけど、イーサン・ハントになりそうだからな。
ヒルツをやれるのはマックイーン以外には思い浮かばないなあ。



今年の8/30に亡くなったチャールズ・ブロンソン@ Flight. Lt. Danny 'The Tunnel King' Velinski(「トンネル王」ですね。そのまんまです)
この人は「んー、マンダム」のイメージのほうが、うちらの年代では強いんだろうなあ。
他の作品のブロンソンはなにも心にひっかかってこないけど、この作品のブロンソンはもう、ひれ伏しそうなくらい好き。
シャワー浴びてる場面とか(コバーンが投げたタオルで体拭いてるときなんて、鼻血出そうな肉体美)
トンネル掘ってる場面とか(あの二の腕が…あふー)。
そしてなにより脱走当日にびびって鉄条網切って逃げようとするとこ。
「暗いとこや狭いとこが実はこわいんだ。逃げたいから頑張ってトンネル掘ってたんだけど、、もう駄目だ」
…あたしが「強い男が見せる弱さ」ってのに陥落してしまう悪癖の発端は、間違いなくこの人だな。


んー、誰だったらいいかなあ。ラテン系胸板でバンデラスか?いや、駄目だ、これまた思い浮かばない。



そしてブロンソンの相棒ジョン・レイトン@ Flight Lt. William 'The Tunneller' Dickes (「トンネル屋さん」かな)
ガキの頃のあたしは、この方に心底憧れていました
金髪碧眼の絵に描いたような美青年、ブロンソンの2番手かと思いきや、
閉所恐怖にビビったダニー(ブロンソン)を「俺がついてる。俺がちゃんと連れて逃げてやる」となだめ、サポートし、
実際に脱走を成功させてしまうという『やるときゃやりまっせ、俺は!!』という男。
この役者さんはこの作品でしか知らないんだけど、初めて観た時同様、印象は未だに少しも変わらず
「かっこいいなあ」でした。
まあ、年齢を重ねて「かっこいい」から「かわいい」になってしまったのは確かですけど、
出演者の中で、容姿部門ランキングをやるとしたら、間違いなく首位はこの方でしょう。
1939年産まれってーから、今の姿はできたら観たくないなあ。
ブロンソン同様、「シャワーの場面」が好き。モップにもたれてる姿がたまらなく可愛いんだよな。だはー。


この人はねえ…金髪碧眼可愛い系だから、レオか?いや、レオにはダニーの蔭にまわるなんてできないから無理か。


ジェームス・ドナルド@Group Capt. Rupert 'The SBO' Ramsey(ラムゼイ大佐(だよな、少佐だったか?)ですね。そのまんま)
この方は脱走に不参加。足を怪我してたからかもしれないなあ。
静かな知性と、穏やかな中に見せる存在感と迫力。
最後に帰ってきたヘンドリーと会話してる場面が、本当に大好き。
1993/8/3に亡くなってるようです。黙祷


んー、誰だろう。いそうでいないんだよな、こういう人。難しいなあ。


ドナルド・プレザンス@Flight Lt. Colin 'The Forger' Blythe (偽造屋ブライス
1995/2/2に亡くなりました。これは覚えてる。凄く哀しかった。
いい役者さんでした。後年は「ハロウィン」シリーズのルーミス博士でしかお目にかかれなかったけど。
「遺作が「ハロウィンシリーズ」だなんてなあ…」って、亡くなったことに加えて、これも哀しかった。
映画の「そして誰もいなくなった」、そしてリメイク版の「死海殺人事件」でも判事をやってたのは印象的。
(後者に関しては「なんでこんな駄作に出るかなあ」って哀しかったもんな)
この偽造屋さん、文句のつけようがないくらい良い。
目が見えなくなりつつあるときからは、もう涙腺が「壊れそうです、やばいです」って警報ばしばし。
前述したけどヘンドリーに「ありがとう、出してくれて」って言ったとき…警報むなしく涙腺大決壊。


リメイクされたくはないけど、もしされるんだったら、是非ケビン・スペイシーにやっていただきたい。


ジェイムス・ガーナー@ Flight Lt. Bob Anthony 'The Scrounger' Hendley(調達屋ヘンドリー)
近年では「スペース・カウボーイ」で元気な姿を拝見いたしましたっけ。
調達屋ヘンドリーは、本当にいい。この濃い捕虜軍団の中でも一際良い。
好きだな、ほんとに。出てくるだけでわくわくするもん。今も昔も、そして間違いなくこれからも、わくわくしてるんだろうな。


この人は…いない。ガーナーだからこそのヘンドリーだもんな。


リチャード・アッテンボロー@ Squadron Leader Roger 'Big X' Bartlett(ビッグX ロジャー・バートレット)
若い。若いなあ。
ジュラシック・パーク」の爺さんで久々に「再会」したときは「うわ、こんなじーさんになっちまったか」と哀しかったな
ゲシュタポにどんな目に合わされてきたんだろう、バートレットは。
なにをもってして、みんながあんなに信頼を寄せているんだろう。
いろんなことを想像させてくれる、そんなビッグX。
今のサー・アッテンボローも「かわいいじーちゃん」で好きなんですけども、ビッグXの姿が焼きついてるから、哀しいです。


いったい誰がやるってんだ、この人を。トム・クルーズあたりがやったら、怒るぞ、あたしゃ。


ジェームス・コバーン@ Flying Officer Louis 'The Manufacturer' Sedgwick(技術屋セジウィック
2002/11/18御逝去。哀しかったです。
この人も、この映画での役が1番好きだなあ。
冒頭にいきなし逃げ出そうとして、ブロンソンにロシア語を習う。
「や・ば・す・るーぶる」(って聞こえるんだもん)って練習してる姿がまあ、可愛いことおかしいこと。
でっかいトランク持って脱走、チャリに乗ってのーんびり脱出。
カフェで茶してたら、レジスタンスにでくわして、脱走成功。
セジウィックの他には「スピーク・ラーク」…こんな人、もう出てこないだろうなあ。


この人も,いない。コバーンだからこそのセジウィックですわ。


デヴィッド・マッカラム@Lt. Cmdr. Eric 'Dispersal' Ashley-Pitt (土処理人 アシュレー)
この方は、まだ御健在。DVDの特典映像のインタビューでお姿を拝見しましたっけ。
「どうみても文系だろう」っていう、その佇まい。「軍人ぢゃねーだろ、どうみても」なんだけど、でもいいんだ。
バートレットに気付いたクーン(ゲシュタポ)の目を逸らそうとして、自己を犠牲にする姿に、胸が詰まりそうになります。


そうだなあ、ジュード・ロウだったらいけるような気がする。あの冷たそうで、ちょっとぬめっとくるような雰囲気、合ってそうだもの。


ゴードン・ジャクソン@ Flight Lt. Andy MacDonald (Intelligence) (情報屋マック)
1990/1/15に亡くなってます。
この人の存在は、毎回忘れてしまうんだけど、映画が始まって登場した瞬間に
『そうだよ、あたしマックのこと大好きなんぢゃん!!』と必ず思い出すんだな。
独立記念日(あの焼酎を「いけるよ」とお気に入り。凄い人かも)にアイヴスと踊る姿が凄く好き。
「初歩的な罠だぞ」と指導していたのに、その同じ罠に引っかかってしまう姿が哀しい。
「ああ、駄目だよ、マック!!」…心の叫びです、まぢで。
バートレットと「護送車」の中で語り、「休憩」で語る姿…ドイツ軍のばかやろー!!
戦争だからしょーがないとはいえ、でもねえ…しくしく。


リメイク?とんでもない、マックはこの人以外に考えられませんもの。


この人をやろうなんてクソ度胸のある役者がいたら、お目にかかりたいもんです。無理だっての。


アンガス・レニー@Flying Officer Archiald 'The Mole' Ives (モグラのアイヴス)
独立記念日の日の「悲劇」。これはもう涙なしでは観れません。
その直前まで、マックと楽しそうに「やっと帰れる」って踊ってたんだもの。
独房でのヒルツとの出会い、脱走が失敗するたびに徐々に精神的に参って行く姿。
壁にすがって泣きそうになる姿がもう…アイヴスー!!!


これまた、この人以外には出来ない役でございますわ。


あたしのお気に入りLawrence Montaigne@Hayes ('Diversions') (ヘインズ)
特になんか役目をふられていたわけではないんだけど、顔が好きだったな。
コバーンの相方だったか?と思ったら、そうでもなくて。
カベンディッシュが捕まったあとに「君もか、ヘインズ」と、言われたときのしょぼくれ加減がまあ、そそるそそる。
地味なんだけど、なんか好き。


この人はねえ、ジェイフがやってくれるんならアリにする。絶対いいと思うなあ。
でも、「50人」のうちの一人なんだよな。そんなことになったら「ドイツ軍のばかやろー!!」って絶叫かますかもしれないな。


ナイジェル・ストック@Flight Lt. Denys 'The Surveyor' Cavendish (測量屋カベンディッシュ)
1986/7/23御逝去だそうです。
この人は、ガキの頃から「ベッドの人」とあたしの頭には刷り込まれていました。
あと「指揮の人」とも。
収容所についたら「俺は上のベッドだ〜」と嬉しそうに飛び乗り、
暫くしてからそのベッドの敷き板をヒルツが「徴発」したもんで、飛び乗って転落。ヒルツ「おらしらねー」
…このシーン好きだなあ。
トラックのヒッチハイクに成功したものの、結局失敗するんだよな。
50人の中の一人。かなり「笑い」のほうの担当キャラだっただけに、哀しかった。


この人ねえ…アルバート・フィニーあたりだったらなんとか…ってーかそれ、外見似てるだけなんだけどもさ。


ロバート・グラフ@ Werner 'The Ferret' (白イタチ ウェルナー)
1966/2/5に御逝去
驚いたなあ、この映画公開後三年で亡くなってるんだ。1923年産まれだから、39か
…あたしの誕生日(1966/3/17)直前だ。まあ、全然関係ないけども


ヘンドリーにいいように使われてしまう、「偽造軍団」のために本当に役立った人。
お人よしの馬鹿なんだけど、独立記念日には「物凄い発見」をしてしまう。
馬鹿なんだけど、馬鹿だからこそ憎めないキャラでした。


この人ねえ…なんかマット・デイモンも出演者に名前あがってるみたいだけど、
役をふるとしたら、この人あたりだったらまあいいかなって。
でも、この役もこの人だからこそであって、やっぱやめてほしいかなって気もしますが。


ハンス・メッセナー@Col. von Luger (prison commandant) (収容所長ルーガー)
1991/11/御逝去
大脱走以降はTVの仕事をなさっていたみたいですね。
この人、好きなんです。大戦中のドイツ軍ってーと、どうしても悪いイメージしか出てこないんだけど
間違いなくこういう人もいたんだろうなあって。
最後にヒルツと会話して去って行く姿が哀しい。「粛清」されちゃうんだろうなあ、とか考えてしまって。


この人は…デビッド・ニーブンだったらいいかも…って、まだ御存命だっけ?うーん…


忘れちゃいけないHans Reiser@ Herr Kuhn (ゲシュタポの人 クーン)
1992/6/14御逝去
ルーガーとは対照的に「イメージ通りのドイツ軍の人」。
ゲシュタポ所属で、バートレットの宿敵。
出番は少ないけど、存在感は物凄い。アシュレーとの「刺し違え」は「どはっ!!」となりました。


この人を誰がやるかって?そんなんいませんよ、この人だからこそ、なんですもの。


他にも仕立屋さんとか、いも焼酎飲むと声が変わるゴフくんとか(ヒルツにボールとグローブ渡す係)、
ほんとにいっぱい、書ききれないくらい。
登場人物はみんなキャラが立ってて、無駄キャラがただの一人もいない。


今,こういう作品を作ることは出来ないと思うな、やっぱり
いくら金をかけても、最新の技術を駆使しても、当代人気の役者をそろえても絶対無理だと思う。


この映画に出会えて、ほんとに良かった。
これまでもそうだったように、これからもずっときっとこの作品はあたしにとって
『これさえ観れば、大概のやなことは忘れる』ってくらい大事な映画であり続けることと思います


めーっちゃくちゃ長くなっちゃった。ごめんなさいー。