“アイデンティティー”


丸の内東宝

みなみちゃんひつじちゃん


天を突いたような豪雨の夜、寂れた街道で交通事故が起こる。
加害者のエドジョン・キューザック)は、近隣のモーテルに救援を求めるが、豪雨で電話は不通。


道路も冠水し、行く手を阻まれてしまう。やむなくエドはモーテルに引き返し、天候の回復を待つ。


モーテルに集ったのは、同じように立ち往生した10名の男女。女優(レベッカ・デモーネイさま)と運転手(ジョン・キューザック)、
娼婦(アマンダ・ピートちゃん)、新婚夫婦(クレア・デュバル&誰だっけかな)、囚人と
刑事(レイ・リオッタ)…。


互いに見ず知らずの彼らは、それぞれが何か秘密を抱えているようだった。やがて彼らは雨に閉ざされたモーテルで、1人また1人と謎の死を遂げてゆく。


☆★☆★☆★☆★


冒頭から大雨、雷鳴、モーテルとサスペンスのお膳立てが揃い、しかも胡散臭い人物たちが登場。
彼らを取り巻く背景も謎だらけ。これなら嫌でも映画は盛り上がる。
次々に繰り出させる展開が不可解なのも、実は絶妙に物語へ仕組まれていて納得。
モーテルという閉鎖的な空間を舞台に、テンポ、テンション、もちろんサスペンスお約束のコケオドシと共に、90分間最後まで息をつかせない。


いっやー、あたし好きだな、こういう「一個の場所で起きる「そして誰もいなくなった」系」のお話。


なんでうちらが殺されるの?
次は誰?
うちらは偶然ここに集まったんぢゃなくて、集められたの?
自分達に共通するものはなに?
「来週誕生日なのに」「いつ?」「5月10日」「俺も」「あたしも」「ボクも」…みーんな同じ誕生日…なんで??


ぞくぞく来るぢゃないですか、たまりませんな。


観る前は不安だったんですわ、こないだの「閉ざされた森」みたいに、すこーん!!とはずすクソ映画ぢゃないかってね。
でも、これは大当たり。後味滅茶苦茶悪いけど、それでもあたしは凄く好きだな。


途中でオチがなんとなく読めるけど、それでも、かなり楽しめたですな。


観客としては、それぞれの登場人物に疑いの眼差しを送りたくなるわけで。
キューザックは相変わらず観客を惹きつけるし(ここ数年ケビン・スペイシー化が更に進んできたな)、
中でもレイ・リオッタのキャスト的な役割は大きい。彼の場合は他の作品に限らずバッドガイだが、
そんな事をひっくり返す位に良くできた脚本、そして最後まで観客を揺さぶる監督の演出も素晴らしいですわ
脚本の持つサスペンスの面白さを十二分に感じさせてくれるってのかな、なんか偉そうなこと言っちゃうと。


確かにトップスターがいないですよ。でも、あたしはこのキャストはベストだと思う。
ハリウッドで派手に活躍してる人はいないけど、その分一癖も二癖もある人が集まって
(モーテルのあんちゃんラリーなんて最高。この人は「フレム・ダスク・ティル・ドーン」でもたかが五分程度の出演だってのに印象強烈だったし)
それぞれの人物の掘り下げが結構丁寧だから、いわゆる「捨てがたい魅力」ってのが産まれてくるんだな


ま、でも「アイデンティティ」なんだもんね。掘り下げないと展開しない話ってやつで。
なんでこの題名かが分かったときに、ほとんど犯人が見えてくるでしょうし。


うん、面白かった、満足満足


あー!!大事なこと書くの忘れてた!!!
うっかりこれ読んで「おもしろそーだな」って思って鑑賞しようと思った人がいたときのために、絶対書いておかないといけないこと。


サスペンスは好きだけど、ホラー系駄目だって人、絶対行っちゃいけません。
ホラーっていうか、「これちょっとスプラッタ系だろ」って場面ありますんで。
(敢えてちょっとだけネタバレ)乾燥機の中で回る生首や、車におもいっきし跳ね飛ばされる人間なんて
想像するだけでもいやだ、絶対に避けたいって思う人は、間違っても行っちゃいけません。


あたしはサスペンスのみだと思って、ホラーやスプラッタ嫌いのひつじちゃんを連れて行ってしまい
彼女を終ってから90分ほど固まらせてしまいました。
本当にごめんなさい。心の底からお詫びいたします。