キル・ビル


池袋・シネマサンシャイン
うちの居候 きっくんと


ひとりの女が長い眠りから目覚める。彼女の名は、ザ・ブライド(ユマ・サーマン)。
自分の結婚式の最中に、かつて所属していた毒ヘビ暗殺団の襲撃を受け、夫やお腹の子を殺されたのだ。
奇跡的に回復した彼女に残されたのは、暗殺団とそのボス―ビル(デヴィッド・キャラダイン)への復讐のニ文字だけだった。
ザ・ブライドは伝説の刀鍛冶―服部半蔵サニー千葉)を訪ね、名刀ハットリ・ハンゾウを譲り受ける。
暗殺団のメンバーは5名。その名を記したリストを手に、女刺客の復讐の旅が始まった。キル・ビル…ビルを殺せ!


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6年です。6年待ちましたです。ホントに長かったです。
でも、待った甲斐がありました。
この長かった6年を「なかったことにしてあげますわ、ほーっほっほ」って高飛車な笑いで飛ばしてあげちゃうくらいの作品でしたわ。 
涙出るくらい嬉しいです。

(こっからかなり暴走しまっす。暴言かますかもしれません。野蛮で下品なのが嫌いな方、この映画が嫌いな方はここで終りにしてくださいな)

えー、ちょっと書いちゃ休んで、また思い出して書いてってのの繰り返しだったんで、文脈滅茶苦茶ざんす。前後しまくってても御容赦ください。

全編にあふれるB級ぽい雰囲気、でもキマっている映像と音楽、楽しければ何でもやっちゃうこれがタランティーノなんだな。
レザボアドッグスから全作観ているけどこの作品が一番タランティーノが楽しそう。
(不評だった「ジャッキー・ブラウン」が、タラちんの思い入れが1番強いんだっていうあたしの信念は変わらないけどね)

飛行機内で日本刀がどうとか、日本語がヘタとか、いろいろ細かい事をつっこんでいる人もいるけどそんな事をタランティーノの作品で考えてはいけません。

いいぢゃないですか、タラちんなんだから
飛行機に刀ホルダーがあって、他の日本人もみんな刀をそれに預けてたっていいぢゃないですか。タラちんなんだもん。

日本語が変だっていいんだよ、タラちんなんだから。
「キリタイネズミガイルカラ」
「ウワサガヒトリアルキシテルミタイダネ」
「ムネニイチモツオアリノヨウデ」
「カタナハツカレシラヅ」
「デナキャ5分トモタナイヨ」
ってかふつうアメリカ人でこういう台詞は出てこねーだろ。
これが他の映画やったら、日本語バカにしとるんか!って話になりますけども
画面の隅々にまで日本映画の愛情がうかがえるから全然許せる。いいんだよ、タラちんなんだから。

「ヤッチマイナー」が「タッチバナヤー」に聞こえてもいいんだ。笑えるんだからいいんだわよ。
「しょーがねーなー」って笑えればいいんだ、この映画はさ。


復讐に燃える者が派手な死亡遊戯のトラックスーツで乗り込むとこからすでに現実放れ。それがタランティーノの世界なんだから。
なんだあれは、って終ってからぎゃーぎゃー文句言ってたね−ちゃんがいたけど、そんなんはポスターを見た時点で気付きなさいってんだ。

飛行機が降り立つ東京の町並みが東宝怪獣映画をイメージしたジオラマらしいけど、普通に撮るより手間をかけて安っぽくしてしまう所がカッコイイ。
さすがタラちん。ぞくぞくするくらい嬉しいんだな、こーゆーのが

千葉ちゃんの気のいい板前さんから剣豪、服部半蔵に口調が変わる所もよかったさ。

そしてなんといっても栗山千明ゴーゴー夕張は最高!
必殺武器「ゴーゴーボール」もカッコイイ!「ハ〜イ」なんて登場していきなりゴーゴーボールをぶち込んでくるんだから。
懐剣に可愛いストラップなんてついててさ、それがまた妙にツボなんだわ。
いいぜ、ゴーゴー!!あたしの中の「べすとおぶ栗山千明」はゴーゴー夕張で決定さ。これは恐らく動かないだろうなあ。

タランティーノ作品全部に言えるけど音楽がとてもマニアで素敵。
布袋さんの「新仁義なき戦いのテーマ」が作品を盛り立てる。戦いのシーンでこれが流れるともっと鳥肌が立ったかも。
そしてこの作品のレコード大賞はなんといいても梶芽衣子さんの「修羅の花」と「怨み節」でしょう。戦いの終わりに復讐の切なさが感じられます。

ほんとにね、とにかく笑いをこらえるのに苦労した。
残虐シーン満載のバイオレンスがなんでこんなに可笑しいんだろなあ。
映画が終わった後、観客の中から「もう、おかしくておかしくて……」という声が聞こえてきたけど、やっぱりみんなそうなんだ。
脱力系の笑いにも飽きてきたので、こういう力こぶの入った笑いは活力の源で、たいへんよろしい(ブリジット・ジョーンズ風に)。


この映画のポイントは「対決」でしょね。食えない登場人物が次々と現れては対決する。
四年も眠り続けていた新妻にナイフ使いの黒人女、隻眼の看護婦、伝説の刀鍛冶、刺客あがりの東京裏社会の女ボス、
果ては、金属球を振り回す女子高生や、指輪しかでてこないメキシコ暗殺団のボスという具合。
”おもちゃ箱をひっくり返す”とは、よく使われる言葉けど、おもちゃ箱どころか、びっくり箱だ。
太平洋をひとまたぎする無理やりな展開も、何年もの歳月を行ったり来たりするぶっとんだシナリオも、長い尺なのに飽きさせない。さすがタラちん
この何がでてくるかわからない、下品さ、低俗さ、馬鹿馬鹿しさこそ、この映画の面白さなんだわ。
昔、何も考えずにヤクザ映画を観て、「ああ面白かった」と家路に着いた兄ちゃんたちの気分を、この映画は感じさせてくれるんだな。
映画ってつくづく面白いもんだと思った。

ほんとに景気良く腕、足、首、血が飛ぶ!跳ぶ!飛ぶ!
ここまでくるとキモイじゃなくて面白い。B級エッセンスいっぱい。最高に満足
日本文化を間違って描くのはタラちんだからいい。ジェリー・ブラッカイマーがやったら許さないけどね。
飛行機がビルの上をかすめる、襖を開ければ雪景色の庭園、飛行機の中には刀置きなど言い出したら止まらない。
今までの洋画が描いてきた日本をそのまま描く所なんかも憎い!!
他の映画だったら「おいー!!」って怒ったけど、タラちんがやるんだから「しょーがねーなー」で済む。
実際はそんなことないってタラちんはちゃんと知ってるし、日本人キャストたちも、それを知ってて、それで嬉々としてやってんだからいいんだわ。

圧巻なのはエンディングに怨み節が流れたこと!!これがアメリカでもエンディングに流れたのは凄いというか嬉しい。
これから日本のカラオケは怨み節と修羅の花が流行る、間違いない(ながいひでかず風に)
予告でも効果的に流れていた布袋の新仁義なき戦いのテーマ、尾藤イサオが日本語で昔歌っていた悲しき願い(ベイベー俺の負けだぜ。みんなおいらが悪いのさ!)
…映画終わって速攻でサントラ買ったもん。

この映画、あたし的には物凄い大当たり。
今年の首位は「昭和歌謡大全集」で動くことはもうなさそうだけど、
もしこれが「分割公開」でなく、一気に公開されてたら、もしかしたらわかんないな。

多分また何回も行くんだろうな。
で、タラちんの【細かい遊び】を発見して、更にきっとこの映画に食われてしまうんだろうなあ、と。

映画に深い意味や感動やメッセージとかの、心に残るものを求めたいって人は、観ちゃいけない映画だと思う。
これは【とてつもない映画好きの映画オタク(タラちん)が、とてつもない規模で作った馬鹿映画】なんだから。

長くなったけど最後に

深作欣二監督は、BR2より、こっちを捧げられたことのほうに喜んでるんぢゃないかなあ】…いや、まあ、あたしの勝手な考えだけどもね。