ボウリング・フォー・コロンバイン





有楽町・シネ・ラセット
ししょー、みなみちゃん、もりたさんと


1999年4月20日アメリカ合衆国は普段通りの穏やかな朝を迎えた。
人々は仕事に励み、大統領は国民が名前さえ知らない国に爆弾を落し、
コロラド州の小さな街では二人の少年が朝六時からボウリングに興じている。
何の変哲もない予定調和な一日のはじまり…このあと、二人のボウリング少年が悲劇的事件を起こそうとは、いったい誰が予想しただろう。


その日、アメリカは旧ユーゴスラビアコソボ紛争における最大規模の爆撃を敢行した。
その1時間後、あのコロンバイン高校銃乱射事件、別名トレンチコートマフィア事件が起きたのだ。
事件の舞台はコロラド州リトルトンのコロンバイン高校。
そこの生徒である二人の少年が、高校に乗り込み銃を乱射。
12人の生徒と1人の教師を殺害したのち、自殺するという衝撃的なものだった。


この事件は全米を震撼させた。
あらゆるメディアが事件の分析を試み、ヒステリックに騒ぎたてた。
映画やTV、ビデオゲームにおけるバイオレンスの氾濫が悪いのだ、家庭の崩壊の産物だ、
高い失業率が原因だ、いやアメリカが建国以来たどってきた暴力的歴史のせいなのだ、と。
報道はどんどん過熱、犯人が聴いていたという理由から
ハードロック歌手マリリン・マンソンのライブがコロラド州で禁止されるという一幕もあった。


しかし、ビデオゲームは日本の方がよほど進んでいる。
家庭の崩壊はイギリスの方がひどい、失業率はカナダのほうがはるかに高い。
なのになぜアメリカだけ銃犯罪が突出しているのだ?
なぜアメリカだけが銃社会の悪夢から醒めることができないのか?
マイケル・ムーアはその大きな身体をゆすりながら、問題の核心に迫るためマイク片手にアポなし突撃取材を敢行していく。


彼は問う。
マリリン・マンソンのライブを禁止するなら、なぜボウリングも禁止しないのか?】


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義弟が絶賛していたので、興味はあったんですね。
彼の推薦するものは、かなりあたしのツボをクラッシュしてくれるので。
ドキュメンタリーってものが元来苦手な彼が推薦するので、これはかなりきそうだな、って。


うん。やっぱり義弟の意見は正しかった。
この映画、凄い。


面白いって言葉を使っていいもんだとは思えないし、どう感想書いたらいいのか悩む映画ではあるけど、
【凄い】ことは間違いない。


「銃が人を殺すのではなく、人が人を殺すのだ」って言葉は確かに正しい。
「自衛のために銃を持つ」ってのもなんとなくわかる気もする。
でも、なんかが微妙に違うっていうか、言葉にできないんだけど、違和感がある。


アメリカより銃の所持率が高いカナダのほうが、銃で死ぬ人は遥かに少ない。
カナダの人は家に鍵なんてかけてない。それでも犯罪発生率は物凄く低い。
人が人を殺す、人の心の問題なんだってことはわかるんだけど、でもNRAの人が言うのとは根本的に違うよな。


宮台真司がパンフに書いてた
【単なる「臆病者の安心」のために、銃が野放しにされ、相互の敵意が増幅される皮肉に、観客の身は震えるだろう。
そんなことのために大勢が死ななければならないのか、と】


アメリカの歴史は「恐怖」の歴史。
常に何かを恐れ脅えているから、銃が氾濫して、こんなとんでもないことになる。
銃が原因ではなく、「アメリカ」に問題があるんぢゃないかっていう監督の切り口はほんとに鋭いです。


チャールトン・ヘストンの後姿が哀しかった。
もう、そういう時代の人なんだろうな、考えを変えるなんてできないんだろーな。
いっぱいいっぱいで、困っちゃって、哀れだったな。


マット・ストーンには驚いた。
サウスパークの放映んときに見る姿とは全然違う。かっこいいんだもん。


マリリン・マンソンがまともに話してる姿、初めてみました。
この人もかっこいい。かっこいいし、話し方が論理だってて頭いいんだなーって思った。
一瞬惚れそうになりましたわ。「彼の音楽は好きだけど、顔がこわい」って思ってたくせにね。


「生活環境の違い」って漠然と思っていたようなことが「こういうことだったのか」って理解できた気がして、
なんか「あー、お勉強になったなー」なんて気もしてきた。
まあ、この一本で全部を理解した気になるのは浅いことではあるんですが。


あー、駄目だ。あたしの感想では、読んだ人が鑑賞する気にはなれないな、間違いなく。
でもこれ、ほんとにお薦めです。絶対に観て損はしない作品です。
多分DVDは買うと思います。で、何度も観て、またいろんなこと考えるんだろーな、ってそんな予感がします。



…なんてのかな、とにかくいろいろ考えさせてくれる作品だったです。
ほんとに言葉でうまく表現できなくてもどかしくなってくるんだけど、
もしこれ、機会があれば是非ご覧になっていただきたいですね。