ヴェニスの商人
- アーティスト: サントラ,ジョスリン・プーク,アンドレアス・ショル,リベラ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/10/05
- メディア: CD
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- 作者: シェイクスピア,福田恒存
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1967/11/01
- メディア: 文庫
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MOVIXさいたま
一人で
16世紀のヴェニス。
ゲットーに隔離されたユダヤ人たちは、金貸し業を営み、キリスト教徒から蔑まれて暮らしていた。
ある日、若きバッサーニオ(ジョセフ・ファインズ)は、美しい遺産相続人のポーシャ(リン・コリンズ)に求婚するため、親友のアントーニオ(ジェレミー・アイアンズ)に借金を頼む。
全財産を船で輸送中のアントーニオは、ユダヤ人のシャイロック(アル・パチーノ)を紹介するが、シャイロックは、無利子で金を貸す代わりに、3ヶ月以内に返済できなければアントーニオの肉を1ポンドもらう、と申し出る…。
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意外に思われるかもしれませんが、あたしは実はかなりのシェイクスピア好きです。
上杉祥三さんが好きで、彼の出演した「グローブ座カンパニー」でいろんな作品を見て…ですから、履歴としては10年ちょっとでしかありませんが。
それでも山崎清介さんの「子供のためのシェイスクピア」は上演されるとほぼ毎回行っているし(これがねえ、大人にでも…ってか大人は子供の倍楽しめるシロモノなんですな)、ほんとにかなり好きなのだ。
「シェイクスピア作品の映像化」となったら即座に「行きたい!!」アンテナが立つ。
というわけで、これも初日に行ってまいりました。
意外なことに、英語圏では初の映像化だとか。
あたしも舞台では何度か観ていたけど、映像として観るのは初めてでした。
…いやあ。
泣いた泣いたとにかく泣いた。
アル・パチーノのシャイロックはひたすら哀しくて切なくて、ほんとに泣けた。
ユダヤ人には目がないか?
手がないのか?
内臓や体つき、感覚、感情、情熱、食べ物が違うか?
刃物で傷つかないか?
同じ病気にかからず、同じ薬で治らないか?
同じ季節の暑さ寒さがキリスト教徒と違うか?
針で刺しても血が出ないか?
くすぐっても笑わないか?
毒を盛っても死なないか?
迫害されても復讐しないのか?
それだってあんたたちと同じだ。
ユダヤ人に迫害されたら、どうしたくなる?復讐か?
この場面、いつも胸が詰まりそうになるんだけど、パチーノのしぼりだすような叫びに号泣かましてしまいました。
アントーニオに同情する人、聡明なポーシャに共感する人、お調子者のグラシアーノが好きな人(あたしも彼が大好き)、いろんな人がいるでしょう。
あたしはとにかくいつもシャイロックの姿に涙してしまうのでありますよ。
有名な「人肉裁判」の判決が出たあとも(これ有名な話だからネタバレとかぢゃないよね?)
[改宗]を命じられてうずくまるシャイロック、改宗してしまったからユダヤの教会に入れず、その前で立ち尽くすシャイロック…泣くなというほうが無理ってもんです。
「可哀想」というのは簡単。
彼を差別し迫害し嘲笑する者たちを「ひどい」というのは簡単。
でもあたし、自分が決して公平な人間でないことを熟知しているから、そんなことは言えない。
極端な差別思考を持っているわけでは決してないが、そういう意識が皆無でないということは日常の細々としたことで思い知らされて自己嫌悪になることが多い。
自分の中にそういう意識があったのかって、真剣にぞっとすることがあるんだ。驚いて、ぞっとする。
だからあたしはヴェニスの人たちに「それはないだろ」「そこまでせんでも」とは言えない。
自分が当時のヴェニスの人間だったら同じことをしているはずだから。
どう言ったらいいのかなあ。
[どよーん]っていうんですか?
そんな音が聞こえてきそうな作品だったっす。
でも、ほんとに泣いたっす。
シャイロックだけでなく、アントーニオがバッサーニオに向ける愛(だよね、あれは絶対。ジェレミー・アイアンズ、英国一ゲイ役が似合う男)にも涙。
今まで観た舞台では「親友」というだけでなんでまあここまで…と思ったことは確かに何度かあった。
女にはわからない男の友情ってやつか?とかね。
(松田洋二がバッサーニオ演じたときは「ああ、小動物的な存在で庇護欲そそるんだな」とか)
しかし、こういう解釈できましたかあ…と、なんかちょい新鮮だった。
さすがジェレミー・アイアンズ、指の先まで神経の行き届いた演技を見せてくれまする。
しかも相変わらず「脱いだらやっぱし凄いんです」の胸板が…あふー(馬鹿)
いやあ、ほんとに「名優」さんたちの匠の技を堪能できたって作品でしたね。
どっちかってーと「身から出た錆」系の男性陣に比べ、女性陣の逞しいことったら。
でもポーシャって顔でかいよな…ジョゼフが顔ちっこいのかわかりませんけども。
逞しいけど、好きぢゃありませんな、このねーちゃんがたは。
16世紀のヴェニス、見事なまでにその世界は再現されていて鳥肌&感動。
衣装もコスプレに見えない、自然にその世界に存在するものとして不自然に感じない。
俳優の演技だけでなくそういう映像面でも素晴らしいのがこの映画。
DVDは間違いなく買ってしまうと思います。
今年のベストワンかもしれませんな。
年末近くになってきたこの時期に、まさかこんなダークホースが出てくるとは…まだまだ今年も気が抜けないですな(何に対してだ)